韓国を揺るがすトロットの熱狂!日本の演歌との決定的な違いとは
トロット と は、韓国の伝統的大衆歌謡でありながら、いまやBTSやBLACKPINKと並んで巨大スタジアムを満員にする超大型エンターテインメントへと進化した音楽ジャンルだ。哀愁を帯びた独特のこぶしと、思わず身体が揺れるダンサブルなリズム。かつて「中高年の懐メロ」と片付けられていたこのサウンドは、いまやZ世代からシニア層までを熱狂させ、韓国カルチャーの最前線に躍り出ている。
ソウル市内のカフェやタクシーに乗れば、洗練されたEDMビートと哀愁のボーカルが融合したトラックが当たり前のように耳に飛び込んでくる。世界中のポップスファンが「トロット と は一体どんな音楽現象なのか」と熱い視線を注ぐ背景には、従来の音楽ビジネスの常識を根底から覆す強烈なダイナミズムが存在している。
日本の演歌とは何が違うのか?決定的な音楽構造とリズムの差

一聴すると日本の演歌に極めて近い印象を受けるかもしれない。確かにそのルーツには、20世紀初頭に西洋から伝わった2拍子のダンスリズム「フォックストロット」や、日本の古賀メロディーとの相互影響が横たわっている。しかし、本質的なグルーヴと表現形式において両者は決定的に異なる。
日本の演歌が静謐な空間で情念や侘び寂びをじっくりと歌い上げるのに対し、トロットの真骨頂は「嘆きを躍動へ昇華させるパワー」にある。「折る(コッコ)」と呼ばれる独特の装飾歌唱法は演歌のこぶしに通じるが、トロットのバックトラックは驚くほどファンキーで速い。ディスコ調のシンセサイザー、華やかなブラスセクション、跳ねるようなベースラインが絡み合い、悲哀を歌いながらもフロアを激しく揺らす。韓国特有の感情概念である「恨(ハン=哀しみ)」を「興(フン=湧き上がる陽気さ)」へと一瞬で転換するエネルギーこそ、トロットが持つ最大の武器だ。
テレビ朝鮮が生んだ怪物番組『明日はミスタートロット』と爆発の起点

長年、若者カルチャーの陰に隠れていたトロットをメインストリームへ押し上げた最大の功労者が、総合編成局のテレビ朝鮮(TV CHOSUN)だ。同局が2019年に放映したオーディション番組『明日はミストロット』で初代女王に輝いたソン・ガインが火をつけ、続く2020年の『明日はミスタートロット』でブームは社会現象へと跳ね上がった。
『明日はミスタートロット』の瞬間最高視聴率はケーブルテレビ史上驚異的な35.7%を記録。無名の若手歌手たちが卓越した歌唱力と壮絶な人間ドラマを武器に競い合う姿は、老若男女をテレビの前に釘付けにした。K-POPアイドルの専売特許だった「ペンライトを持った組織的ファンダム」や「リアルタイム投票バトル」のシステムをトロットの世界に導入したことで、観客は単なる受動的なリスナーから熱狂的なサポーターへと変貌を遂げた。
イム・ヨンウンという絶対王者――韓国音楽産業のチャートを塗り替えた男

この大激変の頂点に君臨するのが、『明日はミスタートロット』の覇者であるイム・ヨンウンだ。彼の存在は、韓国音楽産業の力学を完全に書き換えてしまった。
ソウル・上岩のソウルワールドカップ競技場で行われるイム・ヨンウンの単独コンサートは、10万人規模のチケットが発売開始わずか数分で蒸発する。主要デジタル音源チャートのトップ10を彼の楽曲が独占することも珍しくない。韓国音楽著作権協会(KOMCA)の登録データを見ても、彼の楽曲がもたらすストリーミングや放送著作権料の規模はトップアイドルと肩を並べるか、あるいは凌駕している。温厚な人柄と完璧なピッチ、心に直接染み渡るシルキーボイスは、全世代の心を掴んで離さない。
チョ・ヨンピルの遺伝子からNetflixや世界配信へ広がる現代の進化
現代のトロットは、決してポピュラー音楽から孤立したガラパゴスジャンルではない。1970年代から80年代にかけて「釜山港へ帰れ」などでロックやポップスを大胆に融合させたレジェンド、チョ・ヨンピルが開拓したクロスオーバーの精神が、いま鮮やかに息づいている。
現在制作されるトロットの楽曲は、第一線のK-POPプロデューサーが編曲を手掛け、トラップやシンセウェイヴ、シティポップの要素を取り入れたハイブリッドなサウンドへと進化している。さらにNetflixなどのグローバル配信プラットフォームを通じて関連コンテンツやライブ映像が多言語で配信され、アジア圏をはじめ欧米の音楽ファンにもその魅力が浸透し始めている。トロットは今や、グローバル市場を見据えたハイエンドなエンターテインメントへと脱皮した。
『日韓歌王戦』が火をつけた国境なきブームと日韓の新たな架け橋
トロットの波は海を越え、日本をも本格的に巻き込み始めている。その象徴的な起爆剤となったのが、日韓両国のトップボーカリストが激突した音楽サバイバル番組『日韓歌王戦』だ。
日韓の選抜メンバーがプライドをかけて昭和の名曲や韓国トロットの至宝を熱唱する姿は、両国の視聴者に強烈なインパクトを与えた。日本の視聴者はトロット歌手の圧倒的な声量と豊かな表現力に驚嘆し、韓国の視聴者は日本の名曲が持つ繊細なメロディラインを再発見した。音楽が言葉や国境の壁を溶かし、世代を超えた新たな文化交流の架け橋となる――『日韓歌王戦』は、トロットが持つ普遍的なエモーションの強さを証明してみせた。
次世代K-POPとも称される熱狂の真相とトロットが切り拓く未来
トロットが「次世代のK-POP」と目される理由は、その持続可能性と強固な市場基盤にある。ダンスパフォーマンスやビジュアルの鮮度だけに依存するティーン向けポップスと異なり、トロット歌手は年齢を重ねるごとに歌声の深みを増し、ファンもまた生涯を通じてアーティストを支え続ける。
デジタルネイティブな若手クリエイターの参入により、サウンドの洗練度は日夜更新されている。哀歓をダイナミックなビートに乗せて解き放つこの音楽は、ストレスフルな現代社会を生きるすべての人々に向けた究極のソウルミュージックだ。韓国の片隅から立ち上がり、アジア、そして世界を揺らし始めたトロットの快進撃から、もはや目を離すことはできない。 (出典: トロット と は(Yahoo!ニュース))