なぜ呑兵衛はサッポロ赤星に熱狂する?現存最古のビールが放つ魔力

目次
なぜ呑兵衛はサッポロ赤星に熱狂する?現存最古のビールが放つ魔力
なぜ呑兵衛はサッポロ赤星に熱狂する?現存最古のビールが放つ魔力
@ creator • Click to Play Video Inline
🎵 なぜ呑兵衛はサッポロ赤星に熱狂する?現存最古のビールが放つ魔力

赤星 ビール――暖簾をくぐった先、擦り切れた木製カウンターの隅で冷気とともに佇むその瓶を見つけると、どこか胸がすっと落ち着く。赤地に燦然と輝く五稜星のラベル。時代の流行り廃りが激しい酒類市場にあって、酒場を愛する人々の喉を潤し続ける不動の銘柄がある。サッポロホールディングス株式会社の傘下で伝統を紡ぐサッポロビール株式会社が造り続ける「サッポロラガービール」、通称“赤星”だ。

生ビール全盛の現代において、あえて王冠を抜く所作を愛し、小ぶりなタンブラーグラスに注ぐ赤星 ビールの分厚い苦味を指名するファンは今なお増え続けている。決して派手な宣伝に頼ることなく、赤提灯の光に寄り添ってきたこのビールには、一体どんな物語と美味の仕掛けが隠されているのだろうか。

開拓使麦酒醸造所から続く軌跡:村橋久成と中川清兵衛が賭けた日本のビール醸造業

赤星 ビール

赤星の歴史は、そのまま日本の近代ビールの夜明けと重なる。明治9(1876)年、北海道の大地に誕生した「開拓使麦酒醸造所」。官営事業として立ち上げを指揮した村橋久成と、ドイツ・ベルリンで本場の醸造技術を命がけで体得してきた醸造技師・中川清兵衛の情熱が、すべての原点だった。

氷雪に閉ざされる札幌の厳しい冬を活かした低温発酵。中川清兵衛が持ち帰ったドイツ流の本格製法は、当時の日本において前例のない挑戦だった。黎明期の日本のビール醸造業を切り拓いたその麦酒こそ、現在に直結するサッポロラガービールの原型である。

ラベルに刻まれた赤い星は、北海道開拓使のシンボル「北極星(五稜星)」を象徴したもの。北の大地を照らした開拓の道標は、150年近い歳月を経た今も、色褪せることなく瓶の中央で輝きを放っている。

サッポロ「赤星」ビールの現存最古の歴史と熱処理製法が醸す独特の苦味を徹底解剖

赤星 ビール

現存する日本最古のビールブランドである赤星。その最大の個性は、今や希少となった「熱処理ビール」という製法にある。現代の主流である生ビール(非熱処理ビール)は、精密ろ過によって酵母を取り除くことでフレッシュで軽快な飲み口を実現しているが、赤星はあえて熱処理を施す伝統的なアプローチを守り続けている。

スタイルとしては王道のピルスナーでありながら、味わいの重心が全く異なる。熱処理によってもたらされるのは、ドッシリと腰の据わった麦の旨味と、舌の上に心地よく残る重厚なホップの苦味だ。炭酸の刺激は決してトゲトゲしくなく、きめ細やかな泡とともに喉へと滑り込む。

冷えたグラスにトクトクと注ぎ、ひと口含む。まず感じるのは、クラシカルなモルトの甘みとふくよかなコク。そして後味をキリッと引き締める、凛とした苦味の余韻。この厚みのある輪郭こそが、過度なクリアさを求めた近代的なビールにはない、熱処理ならではの唯一無二の魅力である。

『町中華で飲ろうぜ』が火をつけた大衆居酒屋文化とレトロ瓶の復権

赤星 ビール

赤星は長年、一般のスーパーには並ばない「飲食店専用の瓶ビール」として、知る人ぞ知る玄人好みの存在だった。その潮目を大きく変えたのが、BS-TBSの人気番組『町中華で飲ろうぜ』をはじめとする酒場カルチャーの再注目だ。

年季の入った町中華のテーブルに置かれた大瓶、煤けた短冊メニューが並ぶ大衆酒場で交わされる乾杯。テレビ画面越しに漂うノスタルジックな空気感とともに、瓶ビールを手酌で注ぎ合う所作そのものが、若い世代や女性層にとって新鮮で贅沢な体験として映った。

日本の大衆居酒屋文化において、赤星は単なるアルコール飲料を超えた「信頼の証」として機能している。「赤星を置いている店にハズレなし」――そんな酒場通の格言が広まるにつれ、看板や暖簾に赤星のマークを掲げる店は、旨い肴と人情味あふれる空間を約束するアイコンとなったのだ。

呑兵衛が唸る!赤星の分厚いコクを引き立てる最強ペアリングの真髄

赤星の真骨頂は、何と言っても油と塩気が効いた酒場料理との圧倒的な相性の良さにある。繊細な料理を邪魔しない生ビールとは対照的に、赤星のタフなコクは濃厚な味付けの料理とがっぷり四つに組み合う。

まずは町中華の代名詞、香ばしく焼き上げられた餃子。パリッとした皮から溢れる豚肉の脂とニンニクのパンチを、赤星のビターなホップが鮮やかに洗い流し、次の一口を誘う。さらに、八丁味噌や醤油でじっくり煮込まれたモツ煮込みや、甘辛いタレをまとった焼き鳥。タレの焦げた風味とビールの香ばしさが重なり合い、口の中で見事な調和を生み出す。

昭和の薫り漂うハムカツやポテトサラダといった素朴なアテにも抜群に寄り添う。油分をスパッと断ち切りつつ、麦の旨味を残す絶妙なキレ味。どんな肴も受け止める懐の深さこそ、赤星が呑兵衛の心を掴んで離さない理由だ。

今どこで飲める?買える?最新の取扱店事情と限定缶の探し方

かつては限られた業務用ルートでしか出会えなかった赤星だが、近年の熱狂的な支持を受け、その楽しみ方は広がりを見せている。全国の大衆酒場や焼き鳥店、町中華はもちろんのこと、近年では赤星を常備するネオ酒場やクラフトビアバーも増えている。

家庭で楽しみたい場合はどうすればよいか。基本は飲食店専用の瓶ビールだが、酒類専門店や一部のディスカウントストアでは大瓶・中瓶のケース購入が可能な場合がある。さらに見逃せないのが、サッポロビールが定期的に数量限定で発売する「サッポロラガービール 缶」の存在だ。

コンビニエンスストアや大手スーパーに並ぶこの限定缶は、発売されるたびに即完売となる人気ぶりを見せる。自宅にいながらあの骨太な熱処理の味わいを堪能できる貴重な機会として、見かけたら迷わず手に入れるのが愛飲家の共通認識となっている。

時代を超えて渇きを癒やす赤き北極星の矜持

効率化と技術革新によって、世の中には軽快で飲みやすいアルコール飲料が溢れている。そんな中にあって、手間のかかる熱処理製法を守り、飲食店とともに歩み続けてきた赤星の姿勢はどこか誇り高い。

手酌で注ぎ、泡の立ち具合を眺め、乾いた喉に流し込む。そこには、ただ喉の渇きを潤すだけではない、人と人が杯を交わしてきた長い歴史と温もりが詰まっている。今夜もどこかの赤提灯の下で、赤い星を掲げた瓶がパチンと音を立てて開けられているはずだ。 (出典: 赤星 ビール(Yahoo!ニュース)