WANIMA「やってみよう」の正体!童謡原曲と三太郎CMの裏側
やっ て みよう 曲として日本中の茶の間とライブハウスの空気を一変させたあの旋律は、単なる耳馴染みの良いタイアップ楽曲の枠に収まらない。誰もが幼少期に歌ったはずの軽快な童謡が、3人組ロックバンドの爆発的なエネルギーによって、現代を生きる人々の背中を無条件に押し倒すほどの猛烈なアンセムへと生まれ変わった。テレビから流れてきた数秒のフレーズに、思わず手を止めて画面を二度見した記憶を持つ人は決して少なくないはずだ。
街中のストリートから大型フェスのメインステージに至るまで、時代が移り変わっても色褪せないやっ て みよう 曲の求心力は、綿密に計算された広告戦略と泥臭いパンクスピリットの幸福な衝突から生まれた。単なる懐古趣味でもなければ、安易なカバーソングでもない。そこには、聴く者の無意識の記憶を呼び覚まし、停滞した空気を鮮やかに切り裂く圧倒的な熱量が宿っている。
イギリス民謡「ピクニック」がなぜ疾走感あふれるロックに化けたのか

「丘を越え行こうよ 口笛吹きつつ」——。日本人なら誰もが学校教育や童謡集で一度は耳にしたことがある「ピクニック (イギリス民謡)」こそが、この楽曲の紛れもない母体である。原曲は19世紀に遡るイギリスのトラディショナルソングであり、牧歌的でのどかな田園風景を想起させる素朴なメロディが特徴だ。
だが、この穏やかな民謡に目をつけたクリエイターたちの発想は型破りだった。優雅なピクニックの調べを、激しいドラムの2ビートと歪んだギターリフで再構築する。熊本出身のロックバンドWANIMAの手によって施されたアレンジは、童謡の持つ普遍的な親しみやすさを残しながらも、心拍数を跳ね上げるエモーショナルな推進力を獲得した。誰もが知るメロディだからこそ、一度聴けば頭から離れない。この原曲のチョイスこそが、大衆の心を掴む最大の仕掛けだった。
au三太郎CMと松田翔太が引き出した熱量!制作の裏側

楽曲の誕生において決定的な役割を果たしたのが、KDDI株式会社が展開する屈指のヒット企画「au三太郎シリーズ」である。松田翔太が演じる桃太郎をはじめ、個性豊かな昔話の英雄たちが織りなすコミカルで人間味あふれる世界観は、当時の広告業界に強烈なインパクトを与え続けていた。
毎年恒例となっていた正月CMの大型企画として、「新しい年、とにかく新しいことに挑戦してみよう」というメッセージを打ち出すプロジェクトが始動した。そこで白羽の矢が立ったのが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いでシーンを駆け上がっていたWANIMAだった。従来の常識に囚われない自由な挑戦を肯定するCMのコンセプトと、泥臭く前を向き続けるバンドのフィロソフィーが完全に合致した瞬間である。広告映像と音楽が見事な相乗効果を生み出し、単なるCMソングを超えた社会現象へと発展していった。
メロディック・ハードコアとJ-POPの境界を壊したKENTAのボーカル

サウンド面における最大の功績は、アンダーグラウンドなルーツを持つメロディック・ハードコアの手法を、極めて純度の高いJ-POPとして昇華させた点にある。フロントマンであるKENTAのボーカルは、どこまでも突き抜けるハイトーンでありながら、言葉の端々に生々しい感情の揺らぎと温もりを宿している。
ワーナーミュージック・ジャパンからのメジャー展開を経て、彼らが提示した音像は、ギターロック愛好家だけでなく普段ロックを聴かない層の耳にもダイレクトに突き刺さった。アグレッシブな疾走感と、誰もが口ずさめるキャッチーさの共存。それは妥協のないアレンジ力と、KENTAの圧倒的な歌唱表現力があって初めて成立した奇跡的なバランスと言える。
原曲の童謡とWANIMA版「やってみよう」のメッセージを徹底解剖
原曲の歌詞にあった「アヒルさん ガガガ」という無邪気なリフレインは、WANIMAの手によって「正しいより 楽しい 正しいより 面白い」という強烈な人生賛歌へと大胆に書き換えられた。ここに、この楽曲が単なるリメイクにとどまらない本質が隠されている。
世間の常識や失敗への恐怖に縛られがちな現代社会において、彼らが紡いだ言葉は痛快なほどにシンプルだ。「失敗も思い出」「やったことないことも やってみよう」。理屈や正論でがんじがらめになった日常を、ポジティブな肯定感で軽やかに解き放つ。童謡が持っていた無垢な遊び心を受け継ぎつつ、現実と戦う大人たちの心に突き刺さる応援歌へと見事に昇華されている。
SpotifyからYouTube Musicまで!音楽産業を揺るがす最新配信事情
デジタル配信が音楽体験の標準となった現在でも、この楽曲は驚異的なロングヒットを記録し続けている。SpotifyやApple Musicの定番プレイリストには必ずと言っていいほど名を連ね、YouTube Musicでも世代を超えたリスナーによる再生が途切れることはない。
音楽産業におけるヒットのライフサイクルが短期化するなかで、発表から長い年月を経てもなお運動会、部活動、企業のキックオフイベントなど、あらゆる「スタート」の現場で選ばれ続けている事実は特筆に値する。ストリーミング時代のアルゴリズムをも凌駕する、楽曲自体のタフな生命力が浮き彫りになっている。
時代を超えて背中を押し続けるアンセムとしての存在感
音楽が消費されるスピードがどれほど加速しようとも、人間の根源的な感情を震わせる楽曲の価値は変わらない。「やってみよう」というシンプルな一言に込められたエネルギーは、今もなお日本中のリスナーの心を揺さぶり続けている。
歴史あるイギリスの民謡が海を越え、日本のクリエイティブとロックの魂に出会い、唯一無二のマスターピースへと結実した。迷った時、立ち止まりそうになった時、この衝動的なビートはこれからも私たちの背中を力強く叩き続けるに違いない。 (出典: やっ て みよう 曲(Yahoo!ニュース))