伝統の縁起物「のし飴」が今なぜ心をつかむ?初午祭と職人の技
の し 飴──細長く引き伸ばされ、紅白の螺旋を描いてリボンのように結ばれたその飴を目にした瞬間、冬枯れの冷たい空気がふっと華やぐ。艶やかな光沢と、どこか懐かしい砂糖の甘い芳香。古くから厄除けや招福の願いを託されてきたこの細工飴が、今まさに驚くべき熱気をもって人々の視線を集めている。単なる昔ながらの駄菓子ではない。掌に乗るほどの小さな砂糖菓子に、数百年受け継がれた日本の祈りと超絶技巧の職人技が凝縮されているのだ。
冷え込みの残る境内や古い街並みで売られるの し 飴は、厄を祓い幸運を結び留める象徴として、時代を超えて愛されてきた。大量生産のスイーツが溢れる現代において、なぜこれほどまでに素朴で手の込んだ縁起物が熱狂を生み出しているのか。歴史の深層から現場の職人たちの証言、そして入手ルートまで、その魅力を追った。
なぜ今「のし飴」が再注目されるのか?レトロモダンと開運への渇望

デジタル疲れが叫ばれる昨今、手触りのある温もりや「本物の祈り」を宿した伝統美への回帰が進んでいる。その象徴的存在として脚光を浴びているのがのし飴だ。シンプル極まりない砂糖と水飴の配合でありながら、視覚的な美しさと「人と人を結ぶ」という直球のメッセージ性が、若い世代やカルチャー層の心に強く刺さっている。
ソーシャルメディア上では、琥珀色の飴が空気を抱き込んで純白へと変わる製造工程の動画が数十万回再生を記録。「食べるのがもったいない」「飾っておくだけで部屋の空気が清まる」といった声が相次ぐ。先行きが不透明な時代だからこそ、目に見える形で「福を呼び込み、厄を断ち切る」という縁起物の原点に、多くの人が救いを求めているのかもしれない。
松阪初午大祭と岡寺山継松寺──街中が紅白に染まる「厄落とし」の熱気

のし飴文化の最大の中心地といえば、三重県松阪市だ。毎年3月初旬、日本最古の厄除け霊場として名高い岡寺山継松寺の周辺で開催される松阪初午大祭では、街全体がのし飴一色に染まり上がる。
露店や老舗和菓子店が軒を連ねる参道には、赤と白、さらには色鮮やかな現代風ののし飴が山積みされ、参拝客がこぞって買い求める。地元では「初午の日にのし飴を買い、親類や友人に配ることで厄を落とし、福を分かち合う」という風習が今なお強固に息づいている。早朝から立ち込める甘い湯気と人々の熱狂は、早春の松阪に春の訪れを告げる風物詩そのものだ。
江戸の飴売り・細田徳兵衛から続く系譜と和菓子製造業の粋

歴史を遡ると、日本の飴文化は江戸時代に空前の発展を遂げた。その象徴的な立役者として知られるのが、日本橋で名を馳せた伝説の飴売り・細田徳兵衛だ。彼が生み出した創意工夫に富む飴の製法は、やがて全国の和菓子製造業へと波及し、各地の風土や祭礼と結びついて独自の進化を遂げていった。
過酷な競争が続く現代の食品産業において、手作業による飴細工を維持することは容易ではない。しかし、気候や湿度を見極め、極限まで熱した飴を自在に操る技術は、まさに日本が世界に誇るクラフトマンシップの到達点である。原料が純粋だからこそ誤魔化しが利かない。火加減ひとつ、引く回数ひとつで味が変わる緊張感の中に、職人たちの誇りが宿っている。
民俗学と文化庁の視点──なぜ飴を「熨斗(のし)」の形に結ぶのか
のし飴が持つ独特の形状には、深い民俗学的な意味が込められている。「のし」とは本来、鮑(あわび)を薄く伸ばして乾燥させた「熨斗鮑(のしあわび)」に由来し、古来より長寿や繁栄を祈る最高級の贈答品とされてきた。それがやがて儀礼の簡略化とともに紙や水引で模され、さらには庶民の手が届く飴の造形へと昇華した。
無形文化遺産の保護や食文化の継承を推進する文化庁の取り組みの中でも、祭礼と結びついた郷土菓子の文化的価値は見直されつつある。「伸ばす」ことで生命を延ばし、「結ぶ」ことで縁を固める。のし飴は、かつての人々が物質の形に込めた切実な祈りの結晶なのだ。
NHK『美の壺』でも魅了した職人技と極上の艶
かつてNHK『美の壺』の飴特集でも取り上げられ、多くの視聴者を釘付けにしたのが、熟練職人による飴引きの瞬間だ。現在もNHKオンデマンドなどでその映像美を追体験できるが、熱い飴の塊を素手同然でリズミカルに引き伸ばし、空気を均一に含ませていく様は、もはや伝統工芸の域を超えたライブパフォーマンスである。
空気を含んだ飴は、黄金色の透明感からシルクのような真珠色へと劇的に表情を変える。さらに紅色の飴を絶妙な比率で重ね、冷えて固まる寸前の数秒間でくるりとねじり、流麗な「のし結び」を完成させる。指先の感覚だけを頼りに生み出されるその艶と曲線美は、機械化された工場では決して再現できない。
現地から楽天市場まで──縁起を逃さない2026年最新の入手ルート
この希少な縁起物を手に入れるには、どのような方法があるのか。最も風情を味わえるのは、言うまでもなく松阪初午大祭などの祭礼現地へ足を運び、出来立ての飴をその場で選ぶことだ。祭りの熱気と冷気の中でパキリと割って口に含む瞬間の美味しさは格別である。
一方で、全国菓子工業組合連合会に加盟する各地の実力派和菓子舗が、伝統の味を全国へ届ける取り組みも加速している。現地へ赴くのが難しい場合でも、名店の公式オンラインストアや楽天市場などの主要ECプラットフォームを通じて、職人が丹精込めて手作りしたのし飴を取り寄せることが可能になった。厄年の厄除け祈願としてはもちろん、日々の生活を好転させる開運のお守りとして、この紅白の甘美な伝統を生活に取り入れてみてはいかがだろうか。 (出典: の し 飴(Yahoo!ニュース))